序論
次世代ワイヤレスアプリケーション向け接続デバイスの急増により、より迅速で革新的、そしてコストパフォーマンスに優れたテストソリューションの需要が高まっています。コストの削減とテストスループットの向上が、設計検証段階および量産ラインでのテストの双方から求められています。テストエンジニアは、被試験デバイス(DUT)の接続数を減らし、かつ複数のテストを平行して行える方法を模索しています。
1つのテストシステムですべてのテストを行える万能なソリューションは、現実には存在しません。テストシステムの仕様は、「設計プロセスと同時に作成されることが多く、テスト機器ベンダーはお客様の仕様に対して迅速かつ柔軟に対応する必要があります。テストシステムの開発期間は、お客様の製品リリースまでの期間に直接影響を及ぼすため、テストシステムサプライヤーは、お客様のニーズに合わせて迅速に提案することが不可欠です。
Mini-Circuitsでは、経済性、信頼性、柔軟性、迅速性の原則に基づいて、テストおよび測定アプリケーション向けの製品ラインアップを充実させました。弊社はこの豊富で多彩なコンポーネントを常に在庫しているため、ビルディング・ブロック・アプローチにより、お客様の仕様に合わせたカスタムテストシステムを最短2週間で出荷することができます。テストエンジニアは、スイッチ、スプリッタ/コンバイナー、アッテネータ、アンプなどを組み合わせ、DUTとテスト機器間のシグナルトラフィックを管理します。この記事では、特にMini-CircuitsのRFスイッチをどのように構成すれば、量産ラインでのテスト効率を改善できるかに焦点を当てます。
スイッチマトリクスと自動シグナルルーティング
実際のテストアプリケーションで使用されるRFおよびマイクロ波スイッチは、シグナルトラフィックを管理し、テストを自動化するためにスイッチマトリクスとして構成されることが多くあります。テストシグナルはスイッチマトリクスを通過するため、その性能は測定の精度、再現性、効率に直接影響します。所定のテストシステムを構築する際に、テストエンジニアは可能な限り、DUTを適切に手sとすることに集中する必要があります。重要なことは、採用されたテストソリューションがDUTに必要な電力レベルで正しい信号を供給すること、またテストポート間のアイソレーションが測定の完全性を維持することです。
テスト アプリケーション用の RF スイッチの主な特性には次のようなものがあります。
- アイソレーション – スイッチが 信号のオンポートから、オフポートへのRF漏洩を低減する度合い。
- 挿入損失 – 伝送線路の固有損失による、入出力間の減衰量。
- 最大定格電力–スイッチがダメージを受けることなく入力できる、RF電力の最大値。
- 切り替え時間– 1つの状態から別の状態に切り替えるまでにかかる時間。通常はミリ秒からナノ秒単位まで。
- スイッチの寿命–スイッチが故障するまでに保証される、切り替え回数。
テストシステムの要求仕様は、アプリケーションごとに異なる場合が多く、複雑なアプリケーションに対応したスイッチマトリクスのルーティングとパフォーマンスの決定には、多くのコストと時間がかかることがあります。この課題を解決するために、Mini-Circuitsではシグナルルーティング用の高次スイッチマトリックスを含む、モジュラー式さらに完全なカスタムテストソリューションを提供しています。これらのシステムに組み込むスイッチのタイプ(メカニカル、ソリッドステート、MEMS)はお客様の仕様に基づいて選択します。(Mini-Circuitsは2025年にMEMSスイッチの製品をラインアップに追加しました)。
メカニカルスイッチ,ソリッドステートスイッチとMEMSスイッチの主な違い
テストアプリケーション用のスイッチマトリックスの実例を説明する前に、それぞれのタイプの特長を確認します。RFスイッチは、メカニカルとソリッドステート(半導体)及びMEMSの3つのタイプに分類されます (図 1)。

メカニカルスイッチ
メカニカルスイッチは、一般的により高いRFパワーレベルに対応でき、もっとも損失が低くまたアイソレーションは最大となる傾向があります。しかし、スイッチング速度が遅く、サイズが大きく、通常はDC消費電力も高くなります。よく設計されたメカニカルスイッチは、数百万回のスイッチング寿命を持つことができますが、大量生産で行う半導体テストのような用途では、この限界もすぐに超えてしまう場合があります。表1にTTLメカニカルスイッチの例を示しています。Mini-Circuitsでは、個別のDCまたはTTL制御部品から、EthernetやUSB制御を備えた統合型テストラックまで、幅広いフォームファクタと制御オプションを持つメカニカルスイッチを提供しています。
| Model Name | Switch Type | Frequency | Insertion Loss (Typ.) | Isolation (Typ.) | Power Rating (Cold Switching) |
|---|---|---|---|---|---|
| ZK-MSP8TA-12 | SP8T | DC–12 GHz | 0.4 dB | 90 dB | 20W |
| ZK-MSP6TA-12 | SP6T | DC–12 GHz | 0.25 dB | 90 dB | 20W |
| ZK-MSP4TA-18 | SP4T | DC–18 GHz | 0.5 dB | 80 dB | 20W |
| ZK-MSP2TA-18 | SPDT | DC–18 GHz | 0.3 dB | 80 dB | 20W |
ソリッドステートスイッチ
一方、ソリッドステートスイッチは、はるかに高速なスイッチング速度、優れた再現性、そして大幅に長い寿命を持つ傾向があります。物理的な可動部品がないため、寿命はスイッチング回数によって制限されることはなく、代わりにソリッドステート技術のMTTF(平均故障時間)によってのみで評価されます。 これらの特性は、特に大量生産テストの用途においては非常に望ましいものです。なぜなら、スイッチング速度はテストスループットに直接関係し、またスイッチは頻繁な使用下でも交換の必要が大幅に減るからです。一方で、ソリッドステートスイッチには、許容電力が低いことやアイソレーションが低いという制限もあります。特にアイソレーションは、テストシステムからキャリブレーションで除去するのが難しく、自動化テストにおいて非常に重要なパラメータとなります。アイソレーションが不十分なスイッチでは、不要な信号が測定経路に流れ込み、測定の信頼性を損なう可能性があります。これにより、システムの精度が低下し、不確かさやタイミング仕様の決定が難しくなることがあります。
幸いなことに、Mini-Circuitsのエンジニアは、広帯域でのアイソレーション性能を飛躍的に向上させ、低アイソレーションに伴ういくつかの課題を克服したソリッドステートスイッチ設計を開発しました。Mini-Circuitsは現在、DCから67GHzまでの周波数範囲に対応し、場合によっては最大110dBのアイソレーションを実現した、コストパフォーマンスに優れたUSB制御ソリッドステートスイッチを幅広く提供しています。
最大67GHz動作のeSBおよびRCSシリーズは、Vバンドまでのテストをサポートするために開発されました。最大18GHzまで動作する超高速スイッチング(標準100ns)PINダイオードをベースとしたTTL制御ソリッドステートスイッチは、5G FR1およびFR3の通信テスト仕様に最適化されています。これらの利点や新製品のイノベーションは、メカニカルスイッチのフルラインナップの機能と組み合わせることで、エンジニアはディスクリートコンポーネントを使ううのか、また完全統合型のカスタマイズソリューションを調達するのかなど、多彩な選択肢を得ることができます。
| Model Name | Low (MHz) | High (GHz) | Switch Type | Switches | Termination | Loss | Isolation | Transitions | Power | Control Interfaces |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| U2C-1SP2T-63VH | 10 | 6 | SP2T | 1 | Absorptive | 4.0 dB | 110 dB | 700 ns | 36 dBm | USB + I2C + SPI |
| USB-SP4T-63 | 1 | 6 | SP4T | 1 | Absorptive | 1.0 dB | 50 dB | 3 μs | 27 dBm | USB |
| USB-2SP2T-DCH | DC | 8 | SP2T | 2 | Absorptive | 1.4 dB | 50 dB | 10 μs | 35 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP16T-83H | 1 | 8 | SP16T | 1 | Absorptive | 7.5 dB | 100 dB | 5 μs | 30 dBm | USB + TTL + Daisy-chain |
| USB-4SP2T-852H | 10 | 8.5 | SP2T | 4 | Absorptive | 2.0 dB | 80 dB | 250 ns | 30 dBm | USB + Daisy-chain |
| U2C-1SP4T-852H | 2 | 8.5 | SP4T | 1 | Absorptive | 3.7 dB | 80 dB | 250 ns | 30 dBm | USB + I2C |
| USB-2SP4T-852H | 10 | 8.5 | SP4T | 2 | Absorptive | 2.5 dB | 85 dB | 5 μs | 30 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP8T-852H | 10 | 8.5 | SP8T | 1 | Absorptive | 4.0 dB | 80 dB | 250 ns | 30 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP2T-183 | 100 | 18 | SP2T | 1 | Absorptive | 2.0 dB | 65 dB | 50 ns | 25 dBm | USB + Daisy-chain |
| TTL-1SP4T-183 | 100 | 18 | SP4T | 1 | Absorptive | 4.0 dB | 60 dB | 50 ns | 30 dBm | TTL |
| USB-1SP4T-183 | 100 | 18 | SP4T | 1 | Absorptive | 4.0 dB | 65 dB | 20 ns | 25 dBm | USB + Daisy-chain |
| TTL-1SP8T-183 | 100 | 18 | SP8T | 1 | Absorptive | 5.7 dB | 60 dB | 50 ns | 30 dBm | TTL |
| USB-1SP8T-183 | 100 | 18 | SP8T | 1 | Absorptive | 5.7 dB | 60 dB | 25 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP2T-34 | 100 | 30 | SP2T | 1 | Absorptive | 2.8 dB | 60 dB | 5 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP4T-34 | 100 | 30 | SP4T | 1 | Absorptive | 4.5 dB | 60 dB | 10 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP8T-34 | 100 | 30 | SP8T | 1 | Absorptive | 5.0 dB | 80 dB | 25 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| USB-1SP2T-A44 | 100 | 43.5 | SP2T | 1 | Absorptive | 3.5 dB | 50 dB | 10 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| eSB-1SP2T-A673 | 100 | 67 | SP2T | 1 | Absorptive | 4.0 dB | 45 dB | 600 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| RCS-1SP2T-A673 | 100 | 67 | SP2T | 1 | Absorptive | 4.5 dB | 45 dB | 600 ns | 24 dBm | LAN + USB + Daisy-chain |
| eSB-1SP4T-A673 | 100 | 67 | SP4T | 1 | Absorptive | 6.0 dB | 45 dB | 600 ns | 24 dBm | USB + Daisy-chain |
| RCS-1SP4T-A673 | 100 | 67 | SP4T | 1 | Absorptive | 6.5 dB | 45 dB | 600 ns | 24 dBm | LAN + USB + Daisy-chain |
Mini-Circuitsの各モデルは、幅広いスイッチ構成、制御インターフェース、および性能パラメータを提供しています。
新技術:MEMS スイッチ
スイッチ製品ラインナップを完成させるために、Mini-Circuits は最近、MEMS 技術を用いたスイッチを発売しました。MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)は、ソリッドステート型と電気・機械型スイッチの両方の優れた特性を組み合わせることを目指した新しい技術です。精密工学を駆使して、メカニカルスイッチのトポロジーをソリッドステート集積回路のように動作するフォームファクタにまで小型化しています。
MEM-SP4T-A18 は、最大 18GHz で動作する SP4T 吸収型スイッチです。この MEMS 技術は1GHz、30GHz の電力で従来の機械的スイッチ(300 億回のスイッチサイクル)よりもけた違いに大きな寿命で、DC パスと広帯域動作を可能とします。が可能となり、スイッチ寿命は従来のメカニカルスイッチよりも桁違いに長く(1GHz・30dBm 動作時で 300 億回のスイッチングサイクル)、図2 に、MEM-SP4T-A18 の一般的な電力および寿命の定格曲線を示しています。
その他の利点として、高速スイッチングタイム(15μs)、優れたリニアリティ(90dBIP3)、定格電力 25W CW(1GHz でコールドスイッチング時)などがあり、いずれも DC 消費電力が極めて低く抑えられています。MEMS スイッチは一般的なメカニカルスイッチと同じフットプリントで開発されているため、極めて高いスイッチ寿命を必要とする用途へのシームレスな移行が可能です。ロードマップでは、より高密度なスイッチモデルも検討されます。

事例1 : 携帯電話ネットワークテスト用の高次スイッチングシステム
最初の実例は、ある携帯電話事業者がネットワーク上に増設された新しい基地局(BTS)装置を検証するためのテストシステムです。このテストシステムでは、新たなBTSノードの各チャネルを評価し、仕様を満たしていることを確認する必要がありました。また、増設されたBTS装置が既存の装置に悪影響を与えずに動作することを確認すること。さらに増設されたBTS装置に対応した携帯電話への妥当性検証も可能にする必要がありました。

この機能を実現するためには、独立した6つのテストステーションを 20 のBTSチャネルのいずれか。またはすべてに接続するシグナルルーティングシステムが必要です。必要に応じて複数のユーザーが同じBTSに接続できるようにセットアップをする必要がありますが、どのテストステーションがどのBTSにアクセスできるかを制限するための制御メカニズムも必要となりました。これらの仕様を満たすために、Mini-Circuitsは、20×6のノンブロッキング・フルアクセス・スイッチマトリックスZT-20X6NBを開発しました。この双方向スイッチ マトリックスは、世界の主要な通信帯域である 600 MHz から 6 GHz をカバーし、ポート B1~B6 (図 3参照) からポートA1~A20へ、任意の組み合わせで接続するようにプログラムでき、複数の入力ポートを同じ出力ポートに同時に接続することができます。この柔軟性によりノンブロッキング構成は、この携帯電話事業者が構築していたような、マルチユーザ、マルチデバイスのテストシステムに最適です。
このシステムは、コンパクトな高さ5U(約10インチ)のラックマウントシャーシとして設計され、簡単にアクセスできるようフロントパネルには26個のRFコネクタ(Nタイプ)すべてを備えています(図4)。 USBとイーサネットのコントロール・インターフェースを備え、またタッチスクリーンも内蔵しているため、ユーザーは多彩な制御が可能です。ソフトウェアは、どなたにも使いやすいMini-Circuits のGUIアプリケーションを通じて提供されます、ネットワーク経由またはUSB接続を介したリモートコントロールが可能となります。Windows用のActiveXおよび、NET APIオブジェクトとHTTP / Telnetサポートにより、一般的なプログラミング環境との互換性を確保しています。

事例2 : 高速スループット用ソリッドステートスイッチの組み込み
600 MHzから 6 GHz までの通信テストに対応した別の例を見てみましょう。図5は、8 x 24スイッチマトリックスのサブアッセンブリです。このユニットは大型の24×48システムの一部で、信号調整用のプログラマブルアッテネータも含まれています。この場合は、スイッチマトリクスの最大通過損失を 12 dBとし、テストポート間のアイソレーションは120dBを確保する必要がありました。また目標とするスループット仕様は、DUTテスト時間を30msec未満とすることでした。
目標仕様を満たすために、このシステムはメカニカルとソリッドステートスイッチの組合せを採用しました。8 ポート側にはSP4T メカニカルスイッチ(MSP4TA-18+)を使用し、0.2 dB の挿入損失と 90 dB のアイソレーションを実現しました。このメカニカルスイッチの20msecというスイッチング速度は、この段階で目標値を満足しています。
図5は、SP4Tメカニカル スイッチを超えた先にある、精巧なスイッチング ネットワークを示しています。 このシグナルルーティングを実現しテスト時間仕様を満たすために、SPI制御のSP10Tソリッド ステートスイッチ(SPI-SP10T-63)を使用しました。
このスイッチの6μsecのスイッチング速度により、メカニカルスイッチが1サイクルを実行する時間よりも早くすべてのスイッチの切り替え可能です。また80 dB のアイソレーションと +27 dBm の最大定格電力を実現し携帯電話事業者の要求仕様を満たします。この例ではメカニカルスイッチとソリッドステートスイッチの両方の利点を活かし、幅広いテストが可能となりました。

40GHz への拡張
上記の例は、Mini-Circuitsが複雑なテスト仕様に合わせてRFスイッチマトリックスをカスタムメイドした2つの例にすぎません。
5Gテストやその他の高周波テストの要求事項をサポートするため、Mini-Circuitsは、同様の方法で構成できる最大26.5GHzと40GHzの動作周波数範囲を持つメカニカルスイッチも用意しています。
業界が多種多様なワイヤレスデバイスの開発に取り組む中、高速で効率的、コストパフォーマンスに優れたテストソリューションの必要性はますます高まります。この傾向を念頭に置き、この記事ではカスタム・スイッチ・マトリックスは、テストエンジニアがテスト・セットアップ効率の最適化をするために、どのように役立つか概要を説明しました。
Mini-Circuitsは多くのお客様と連携し、40 GHzまで動作するシステムや、減衰量制御、信号増幅、信号分配やその他の機能も組み込んだシステムで成功を収めてきました。
Mini-Circuitsのホームページ上でテストソリューションのすべてのポートフォリオをご覧頂けます。独自のモジュラー式テストシステムをオンラインで構成することが可能となりました。その他、販売および技術サポートについては下記のEmailアドレスへ、お気軽にお問い合わせください。
Mini-Circuitsテストソリューション リンク
https://www.minicircuits.com/products/PortableTestEquipment.html