Mini-Circuits Japan株式会社

パワーディバイダとパワースプリッタの違い

パワーディバイダとパワースプリッタではパワーを分配するための抵抗の配置が異なります。

  • パワーディバイダは50⁄3Ω(≈ 16.67Ω)の3抵抗で対称回路が構成されています。
  • パワースプリッタは50Ωの2抵抗が対称型になっています。
パワーディバイダ
パワースプリッタ

インピーダンス解析

パワーディバイダでは各ポートに50⁄3Ωの抵抗が付いており、他のポートを50Ωで終端すると、どのポートから見込んでもインピーダンスは50Ωとなります。

\begin{aligned}
Z_{\text{in}}
&=\frac{50}{3}\Omega+\Bigl(\bigl(\tfrac{50}{3}\,\Omega+50\,\Omega\bigr)\parallel\bigl(\tfrac{50}{3}\,\Omega+50\,\Omega\bigr)\Bigr)\\[4pt]
&=\frac{50}{3}\Omega+\frac{\Bigl(\tfrac{50}{3}\,\Omega+50\,\Omega\Bigr)}{2}=50\,\Omega
\end{aligned}

パワースプリッタでは出力ポートのみに50Ωの抵抗が付いており、他のポートを50Ωで終端すると、信号発生器側から見込むインピーダンスも50Ωとなります:

\begin{aligned}
Z_{\text{in}}
&=(50\Omega + 50\Omega) \parallel (50\Omega + 50\Omega)\\[4pt]
&= \frac{50\Omega + 50\Omega}{2}=50\Omega
\end{aligned}

しかし、パワースプリッタの出力ポートから見込む場合、残りのポートを50Ωで終端しても、インピーダンスは:

\begin{aligned}
Z_{\text{in}}
&=50\Omega+\bigl((50\Omega+50\Omega)\parallel50\Omega\bigr)\\[4pt]&=50\Omega+\bigl(100\Omega\parallel50\Omega\bigr)\\[4pt]
&=50\Omega+\frac{100\Omega\cdot50\Omega}{100\Omega+50\Omega}=50\,\Omega+33.\overline{3}\,\Omega=83.\overline{3}\Omega
\end{aligned}

実用上の使い分けと適用例

2分割した信号の片側だけを測定器でモニタし、もう片側の信号は比測定物に入力するようなレベリングや比測定にパワーディバイダを使用した場合、信号源から信号分岐点までのインピーダンスが50⁄3(≒16.67)Ωとなるため、VSWRが3:1 となり、ミスマッチが大きくなります。

これに対しパワースプリッタを使用した場合は、信号源から分岐点まで抵抗が存在しないため、インピーダンス 0 の理想的な信号源とみなすことができ、VSWRは 1:1 となります。

単純にパワーを2分割する場合には3抵抗型のパワーディバイダを使用しますが、比測定とレベリングには2抵抗型のパワースプリッタが適しています。

ご注意ください。Mini-Circuits のパワー・スプリッタ/コンバイナは本記事で定義されるパワー・ディバイダです。すべてのポートを基準インピーダンス(例:50Ωまたは75Ω)で終端すると、各ポートも同じ基準インピーダンスを呈します。Mini-Circuits のパワー・スプリッタ/コンバイナは、実験室のテスト・セットアップ、システム信号分配、アンテナ・ビームフォーミング、および広帯域・低VSWRで優れた振幅・位相バランスを要するあらゆる用途に最適です。

お客様の用途に最適な製品選定については、どうぞお気軽にお問い合わせください。弊社の技術チームが、設計のあらゆる段階でサポートいたします。