この小型パワースプリッタは、5〜1000 MHzの範囲で、50Ωから75Ωにインピーダンス変換ができます。
従来からパワースプリッタ/コンバイナは、送信機と受信機で必要な信号を分配または合成するために使用される重要な受動部品です。50Ω特性インピーダンスのコンポーネントは一般的ですが、50Ω/75Ωのスプリッタ(入力が50Ωで出力は75Ω、または入力が75Ωで出力は50Ω)は、75Ωバランスアンプの実現など、特定の信号処理アプリケーションで有用です。
基本的に、パワースプリッタは、入力インピーダンスマッチング部、ディバイダ部、および抵抗で構成されます。入力インピーダンスが50Ωの信号を出力インピーダンスが75Ωの2つ信号に分割するシステムについて考えます。図1に示すように、ディバイダ部の入力でのインピーダンスは公称37.5Ωです。マッチングトランスは、このインピーダンスを最小の信号電力損失で50Ωに変換します。反対に、75Ωの入力信号を50Ω出力に分割するシステムを図2に示します。ディバイダの入力インピーダンスは25Ωに近い値です。マッチングトランスは、75ΩのRF入力をこの低インピーダンスに変換します。


構造
ミニサーキットのマッチングスプリッタモデルSBTC-2-10-5075+およびSBTC-2-10-7550+のベースは、低温同時焼成セラミック(LTCC)を利用するBlueCellTechnology™を利用して製造されています。これにより、抵抗とマッチング網の一部をパワースプリッタ回路内に埋め込むことが可能になり、ベースはフェライトトランスにより分配器を形成してマッチング機能を持たせています。コンポーネント間の接続は、弊社独自の溶接プロセスにより形成されます。
性能
モデルSBTC-2-10-5075 +は、50Ω入力を75Ω出力に変換する2分配スプリッタで、図3に示すように860 MHzまでは約1 dB、1000 MHzでは1.2 dB(3 dB の分配損を除く)の挿入損失になります。また、図4に示すように、50~1000MHzにおいて、入力(ポートS)1.05-1.20(typ.)、出力(ポート1およびポート2)1.15-1.35(typ.)とVSWR(定在波比)も非常に良好です。仕様を表1に示します。
モデルSBTC-2-10-7550 +は、入力75Ω 出力50Ωの双方向スプリッタです。図5に示すように、5〜1000 MHzの挿入損失は1 dB未満です。VSWRは、入力と出力の双方において、600 MHz以下では1.25(typ.)で、より高い周波数で上昇し1.40(typ.)でピークに達します(図6)。仕様を表2に示します。
これらのデバイスはどちらも、スプリッタとして使用した場合は最大0.5W、パワーコンバイナとして使用した場合は0.125Wまでの入力電力レベルに対応します。






製品用途
例1
通常、ケーブルシステムのインピーダンスは75Ωで動作しますが、大半のRFアンプのインピーダンスは50Ωです。図7に示す回路を使用すると、50Ωアンプを使用して75ΩシステムでRF信号を増幅することが可能です。回路内でインピーダンス整合ができ最大電力が供給されるため、システム設計者はアンプの選択枝が広がります。

例2
現在、多くのRF通信システムではケーブルネットワークを使用しているため、広帯域の75ΩRFスイッチが必要になっています。従来、RF通信システムでは50Ωインピーダンスで構成されているため、インピーダンスを一致させるためにスイッチは一般に50Ωで設計されています。入力が50Ω、出力が75Ωのパワースプリッタのペアを使用することにより、50Ωのスイッチを75Ωケーブルネットワークで使用することができます。図8は、ネットワーク接続に使用できるケーブル信号の選択回路を示しています。

結論
これらの新開発製品は、小型、低電力損失、広帯域幅という特徴を持っています。1つのデバイスで2つの機能(電力分配/合成とインピーダンス整合)を組み合わせており、多くの実用的なアプリケーションが考えられます。