著者: Aaron Vaisman, Camilo Gomez-Duarte, LTCC Design Group, Mini-Circuits
前書き
フィルタ合成技術とシミュレーションソフト理論と技術の完成度の高さを考慮したとしても、ミリ波フィルタの設計シミュレーション結果には十分注意を払う必要があります。最も重要な設計上の課題の一つに、シミュレーション結果と設計値に如何に折り合いをつけるかということが挙げられます。技術領域によっては、設計値にミートするまで何度も設計や試作を繰り返すことも珍しいことではありません。このプロセスによって設計工程に多くの時間と費用が費やされ、収益に直接影響することになります。ミリ波での製品開発におけるもう一つの大きな課題は、40GHzを超える周波数における費用効果の高い高性能の表面実装パッケージの実現方法で、これはミリ波技術の商業化にとって大きな障壁になっています。
ミニサーキットは、マルチフィジックス解析と独自のアルゴリズムに加えて、多岐にわたる材料の特性評価とモデリングを行い、何百回ものテストを経て最大50GHzのLTCCコンポーネントを一回の設計で開発することに成功しました。

さらにMini-Circuitsは、55GHzまでの優れた電気的性能を持つLTCCと有機パッケージの双方を採用した、市場をリードする表面実装パッケージ技術を開発しました。

この革新的な解決策により、ミニサーキットの幅広いLTCC製品群には次のようなメリットがあります:
- サイズ縮小とコスト削減 – ミリ波領域で最もコスト効率の高いソリューション
部品サイズは、従来のフットプリント0.12 x 0.06インチに対し、0.02 x 0.02インチに - 極小サイズにもかかわらず優れたRF性能.
超高減衰フィルタを実現 - カスタムコンポーネントが必要なシステムの市場投入時間の短縮
再設計なしで4カ月の納期が可能
高度なシミュレーションとモデリング
一般的な商用市場では10GHz以下に限られるLTCC部品ですが、ミニサーキットでは高度なモデリング技術により最大50GHzまでの設計に成功しています。ミニサーキットが採用しているマルチフィジックス解析にはEM(電磁場)、構造、熱シミュレータが組み込まれており、各シミュレータの解析に他のシミュレータ解析が関与することで実際の物理的現象を捉えることができます。
通常、ミニサーキットでは二種類のシミュレーション手法を組み合わることで受動素子を製造する前にRF性能を予測しますが、それぞれのシミュレーション手法には長所・短所があります。モーメント法(MoM)は構造内の導体薄膜をメッシュ化することで解析します。この手法では反復処理は高速ですが、主に2次元面の解析に限定され、基材は空間内で無限に伸びていると仮定するため、実際には有限長である3次元モデルには適用されません。
有限要素法(FEM)では有限長の3次元モデルのシミュレーションを行うことができます。この手法は導体ではなく基材構造をメッシュ化して解析します。FEM 法では有限長3次元モデルや基材によるカップリングや寄生効果が解析できますが、MoM法ではこれらのことはできません。FEM法の欠点は処理が遅いことです。
モノリシック構造で信号が3次元的に通過するLTCCフィルタにおいては、FEM法の方が正確に解析できます。理想はその構造特性が均一であることですが、実際のLTCCの構造は、分散相と異方性を示すセラミックスと導電性材料の多層構造になっています。従って、このような特性を持つLTCCを通過する信号の非線形動作を説明するためには、材料の真の3次元特性評価が必要です。
これら二つのアプローチは強力ですが、今まではシミュレーション値と測定値での開きが大きく、何回も設計変更の必要がありました。このような限界には、材料の構造がデバイスの実際の特性に寄与することを十分理解することが必要です。ミニサーキットは、LTCC製品で使用される基材と導電材料の特性をミリ波領域まで広範囲に評価し、このノウハウをマルチフィジックス解析に統合しました。
シミュレーション 対 測定の例
図3は、LTCCバンドパスフィルタのS21を標準のシミュレーションモデルと材料構造を加味したミニサーキットの高度なシミュレーションモデルと実測値をそれぞれプロットしたものです。ピンクのプロットは、この新しいシミュレーションモデルにおいて材料構造を考慮しなかった場合のシミュレーション結果を表しています。このシミュレーション結果と実測値の特性の違いに注目してください。赤い線は、実施したすべての材料特性評価とモデリングを組み入れたミニサーキットの新しいシミュレーション解析結果を表しています。シミュレーション結果が測定範囲全体にわたってフィルタ特性の実測値と一致していることに注目してください。

図4は、別のLTCCバンドパスフィルタにおけるミニサーキットのアドバンスドシミュレーションの結果と実測値の特性比較を示しています。 S21とS11の両方を示していますが、両パラメータとも非常に正確なシミュレーション結果が示されています。これらの事例は、シミュレーション結果と初号機の特性が正確に一致していることを表しています。

上記の例は、集中定数によるLTCCフィルタ設計について示していますが、同様のアプローチで図5に示す分布定数フィルタ設計など幅広いフィルタ技術に適用できます。
最近では、アプリケーションの高い周波数へのシフトが進んでいるため、分布定数フィルタの開発が必要です。ミニサーキットは研究文献から多くの概念を取り入れ、仕様から任意の分散定数フィルタを合成する独自のアルゴリズムを作成しました。また、完全な3次元モデルでシミュレーションされたSパラメータと、最適化された寸法を生成できる最適化ツールも作成しました。

結論
一回の設計での成功はワークフローにおける究極の目標であると長い間考えられてきました。物理的に複雑な性質を持つLTCC技術においては、1回の試作で設計値とシミュレーション値を一致させることは非常に困難です。 広範囲な材料特性評価とモデリング技術に高度な設計ツールと独自のアルゴリズム、斬新な設計ワークフローを取り入れたシミュレーションにより、LTCC設計において一回の設計での成功を達成することができます。この分野における弊社の技術力は、標準部品とカスタム部品の投入を加速し、お客様が市場投入するまでの時間短縮に貢献しています。 これらの技術革新により、既存のLTCCフィルタ設計においてもサイズの縮小とリジェクション性能の向上が図れました。この記事で紹介した設計技術は、LTCC以外の技術や高周波パッケージングソリューションの技術革新にまで及びます。
参照URL
Mini-Circuits LTCC Filters:
https://www.minicircuits.com/products/LTCC-Ceramic-RF-Filters.html