セラミック共振器フィルタは高いQ値を持つ共振素子で構成されるため、通過帯域の挿入損失が少ないという利点があります。共振器には低損失の誘電体材料が使用されているため必要なQ値に応じて様々なサイズに対応できます。各サイズの共振器を下記に示します。

フィルタには比帯域幅という概念がありますが、これはフィルタの帯域幅と中心周波数の比として定義されます。
\text{比帯域幅}=\frac{\text{帯域幅}}{f_c}比帯域幅にはフィルタの挿入損失を決定する上で重要な役割があります。 比帯域幅が5%の中心周波数が1000MHzで帯域幅が50MHzのフィルタと、比帯域幅が10パーセントの中心周波数が1000MHzで帯域幅が100MHzのフィルタについて考えてみましょう。両者ともフィルタの次数は4次で同じタイプのセラミック共振器、例えば4mmサイズを使用していると仮定します。それぞれの共振器のQ値は約350です。個々の共振器のQ値は同じでもフィルタの挿入損失が同じであるという訳ではありません。これは、挿入損失と帯域幅が反比例の関係にあるためです。このため、比帯域幅が5%のフィルタの挿入損失は10%のフィルタより大きくなります。二つのフィルタの挿入損失の違いを下記の表で確認してください。

| パラメータ | 50MHz フィルタ | 100MHzフィルタ |
| 下側カットオフ周波数, MHz | 975 | 950 |
| 上側カットオフ周波数, MHz | 1025 | 1050 |
| 帯域幅, MHz | 50 | 100 |
| 中心周波数, MHz | 1000 | 1000 |
| 比帯域 | 5% | 10% |
| 次数 | 4 | 4 |
| 共振器サイズ, mm | 4 | 4 |
| センターでの挿入損失, dB | 0.93 | 0.53 |
上記の場合、50MHzのフィルタで使用する共振器のQ値を上げると100MHzフィルタと同様の挿入損失を得ることができます。必要とする高いQ値は6mmや12mmの一回り大きなサイズの共振器で実現できます。
共振器のサイズと比帯域幅は、Qの関数として次のようにプロットされます。以下の二つのグラフは、比誘電率を38、次数を4次とした場合の計算例です。

| 1.5mmサイズのように小さい共振器では、Q値が130と小さくなることを示しています。 典型的な4次フィルタの体積は421mm3 (11.9×9.9×3.9 mm)です。 | 6mmサイズのように中程度の共振器の場合、Q値も480と中程度になることを示しています。 典型的な4次フィルタの体積は4756mm3 (29×20×8.2 mm)です。 | 12mmサイズのように大きい共振器では、Q値が880と大きくなることを示しています。 典型的な4次フィルタの体積は16746mm3 (53×21×15 mm)です。 |

| Size Vs Q-factorの図から、1.5mmサイズのように小さい共振器では、Q値が130と小さくなることを示しています。 したがって、比帯域幅15%のフィルタが必要な場合、小さいQ値でかまわなければ、1.5mmの共振器が最小の寸法で最も安い価格となります。 | Size Vs Q-factorの図から、6mmサイズのように中程度の共振器の場合、Q値も480と中程度になることを示しています。 したがって、比帯域幅4%のフィルタで中程度のQ値が必要な場合は、6mmの共振器が中程度の価格で最適な寸法となります。 | Size Vs Q-factorの図から、12mmサイズのようなより大きい共振器では、Q値が880と非常に高くなることを示しています。 したがって、比帯域幅2%のフィルタで大きなQ値が必要な場合は、価格は高くなりますが12mmの共振器を選ぶと最良の性能が得られます。 |
結論
上記の分析は、同軸セラミック共振器フィルタのサイズ、性能、価格の面でお客様が最良の選択をするのに役立ちます。 1.5mm共振器はサイズに関して最良の選択になり、12mm共振器は性能に関して最良の選択になります。場合によっては、12mm共振器を使った設計でキャビティフィルタに近い性能が得られることもあり、サイズと価格はキャビティフィルタよりもはるかに小さくなります。結局のところ、すべてにおいてサイズ、性能、価格の間で折り合いが必要であるということです。
参照URL
Mini-Circuits Resonators: https://www.minicircuits.com/WebStore/modelSearch.html?model=cbp&search=1
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